小さな民話①

【春日神社の宝刀】

昔、奈良の方から身分の高い武士が来て、祓戸橋から転落した。ふしぎに何ひとつけがをしなかった。これはこの神社のお陰と、腰のひと振りの刀を奉納した。
三条小鍛冶宗近の銘があり、鍔の中央に宗典の名がある。現在も神殿の奥深く、ご神体の守り刀として納められている。
山の神の祭りには、ネムの木で刀を作り、三条小鍛冶宗近の名を書き入れるならわしがある。

【三井の井戸】

小久保さんの山林、井戸谷にこんこんと清水が湧く井戸がある。弘法大師がこの地に来て杖で指示されて掘ったと伝えられる。
400年前、ジョカンボ(腸チブス)が発生して、この谷11軒のうち、小久保さんの家のほかは皆病死した。小久保さん宅はこの水を飲んでいたので助かったと言う。今もその屋敷跡が見られる。
先年小久保の栄おばあさんが大病で入院した時、夢枕にこの山のウツギの木の下の井戸があらわれた。家の人がそこを掘ると古い井戸があり、美しい水が湧き出た。おばあさんは毎日その水を飲んで全快。医者がおどろいたと言う。今、井戸は整備され、大師石仏や手洗いが設けられて、水を汲みにくる人が次々と出てきている。