嫁取り地蔵

scan-5中之庄には二体の地蔵菩薩が、昔からの伊勢街道に沿って祀られています。一体は子安地蔵さんといって、村の入り口で中峰山との境に、もう一体は吉田への出口のナシノキという地に嫁取り地蔵さんが、共に街道に向かって立っておられます。

この俗称“嫁取り地蔵”さんは、大きな岩に刻まれた磨崖仏(背丈約五〇㌢㍍と三五㌢㍍の二体)です。最初から二体の地蔵さんが彫られていたのではなく、初めは一体であったということです。

村の古くからの伝説によりますと、中之庄村へのお輿入れの行列が、この地蔵さんのある付近まで来ますと、突然お嫁さんの姿が消えてなくなるということが、続いて起こったということです。
そこで村の人たちが集まって、いろいろと話し合いました。その結果、このような嫁取りが起こるということは、お地蔵さんが独り者であるからだということになりました。
そこでこの独り者のお地蔵さんに、お嫁さんをもらってあげてはということになり、寂しく独り立っておられる横に、お嫁さんを一体追刻しました。そして、夫婦地蔵として供養することにしました。それからは嫁入りの行列が通っても、花嫁さんの姿が消えて無くなるということはなくなったということです。

今では、この、磨崖仏も風雪にさらされてそうとう摩滅していますが、よく見るとこの二体の仏の刻まれた年代は、確かに違うようです。