天狗のけんか

昔、神野山は、天狗が住んでいる杉の木が一本生えているだけで、禿げ山だったそうです。一方、伊賀の国にある青葉山は、緑が豊かで、たくさんの草木が生い茂り、その間に奇岩もたくさんあって「庭園」のようだったそうです。
そして、神野山と青葉山には、それぞれ天狗が住んでいて、互いにたいそう仲が悪かったようで、いつもけんかばかりしていたそうです。

tengunokenkaあるとき、二人の天狗は、ささいなことから、物を投げ合うけんかを始めたそうで、青葉山の天狗はたいへん怒って、草木や岩を手当たり次第に神野山へ投げてきたそうです。
けんかが終って見ると、青葉山はもとの草木や岩がなくなり、禿げ山となって、神野山は飛んできた岩で鍋倉渓ができて、山の頂上に至るまで草木が生い茂るようになりました。
そして、九十八夜のころになると、つつじの花が、山頂に咲きみだれるようになったそうです。