釜淵

名張川の中峰山領、昔「大川の渡し」があった所から、100mほどの上流に釜淵という深い淵があります。その淵の中に大きな岩があり、その真ん中に直径2mほどの丸い穴が開いているので釜淵と言っています。

昔の言い伝えに、天王様(神波多神社祭神)が出てこられた壺だといいます。
大変不気味な淵なので、だれもその壺に入ったものはないといいます。

kamabuti昔、天王と伊賀の予野の子どもたちが魚釣りをしていると、釜壺の方で白い霧がもうもうと立ちのぼりました。なにごとが起こったのかと、たがいに恐れながらじっと見ていると、たちまち白い衣を着た白髪の老人があらわれました。子どもたちは大変ふしぎになり、子ども心にも「神様か」と思って、たがいに迎えようとしました。すると老人が言うのには「お前たち一度家に帰り、ふたたびここへおいで。私は早く来た者の方へ行くことにしよう」と。

予野と天王の子どもたちは、一生懸命に走って帰り、ふたたび走って来ましたが、天王の子どもが先に着きました。そこで天王の子どもたちは、草刈りの山朸(※)2本の上に老人をのせてかついで帰りました。これが中峰山に鎮座まします神波多神社の祭神だったのであります。

老人をかついだ朸は今も残っていて、子どもたちがかついで帰る時「マジャラク、マジャラク」と言ったので、毎年の祭礼の時「まじゃらく」という行事が行われるのだといわれています。

※朸(おうこ)・・・物を担う棒。てんびん棒。